【仕事中の腰痛・ぎっくり腰対策】『職場における腰痛予防対策指針』のポイント

同じ姿勢を長時間続ける。

重たいものの運搬や、中腰での作業を繰り返す。

仕事中は腰に負担がかかることが多く、腰痛やぎっくり腰のリスクが高い時間帯です。

こんな腰痛リスクを抱えていませんか?

実は複数の項目に当てはまっている人も多いのではないでしょうか。

厚生労働省のHPには、次のようなデータが紹介されています。

職場における腰痛は、「4日以上の休業を要する職業性疾病」のうち、約6割を占める労働災害です。

腰痛の発生が多い業種の全業種に占める割合を見ると、商業(小売業)で12.1%、運輸交通業(道路旅客・貨物運送業)で12.9%、保健衛生業(社会福祉施設、医療保健業)で26.6%となっています。

厚生労働省「職場のあんぜんサイト」より

この場合の腰痛には、「椎間板ヘルニア」や「筋肉疲労」、「じん帯の損傷」などいろいろな原因が考えられますが、その多くが急性の症状、つまり「ぎっくり腰」と呼ばれているものです。

別の調査では、およそ8割が腰痛を経験したことがあり、25%が腰痛が原因で仕事を休んだことがあるという結果が出ていることからも、腰痛は個人の健康だけではなく、社会活動にも非常に大きな影響を与えてしまうようです。(労働者健康福祉機構「職場における腰痛の発症要因の解明に係る研究・開発、普及」)

このような背景から、厚生労働省では労働災害としての腰痛を防ぐために『職場における腰痛予防対策指針』が2013年に19年ぶりに改訂されました。

最新の知見も盛り込んで職場で起こる腰痛のさまざまな要因を洗い出し、心理・社会的要因も対策事項に付け加えられたことが改定前との大きな違いです。

改定された指針をもとに、職場での腰痛を防ぐ対策を探ってみましょう!

介護業界では、2011年までの10年間に腰痛の発生件数は2.7倍にも増加しました。介護中の腰痛予防では「屈まない」「太らない」が重要です。『介護では「屈むな」「太るな」!腰痛に悩まされない介護の基礎』

姿勢・動作・室温・人間関係……、全てが対策の対象

職場では、どのような要因が腰痛を引き起こしているのでしょうか。


『職場における腰痛予防対策指針』では、腰痛の発生要因として以下の4つが挙げられています。



動的要因とは、重たいものを運搬したり、人を抱きかかえたりすることによる腰への負担です


運送や介護の現場はもちろんのこと、オフィスワークであってもコピー用紙や資料の運搬など、気を付けないといけない場面は意外とあります。


加えて、動作要因には、長時間のデスクワークや立ち仕事なども含まれています。


たとえあまり体を動かさなくても、長時間同じ姿勢をとり続けることで、体の同じ場所に負担が蓄積し、腰痛のリスクを高めてしまうのです。


 


環境要因として注意したいのが室温についてです。


体が冷えると腰痛の発症リスクが上がることは、あまり注意を向けられていません。


寒冷な環境では、筋肉の緊張や血流の悪化がおきやすく、腰のケガにつながりやすいとされています。


エアコンの温度設定なども対策が必要な対象です。


 


個人的要因として腰痛のリスクになるのは、年齢や肥満状況もちろん、椎間板ヘルニアなど腰痛を伴う疾患の既往歴です


一度腰痛を発症したことがある人は、再発しやすことがしられています。


同様に、家族がぎっくり腰で苦しんだ経験がある人も再発リスクが高まるという調査結果も出ています。


これは、腰痛に対する恐怖心から、腰の運動量が減少したり、痛みに対する感受性が高まってしまったりすることが関係していると考えられています。


 


最後の心理・社会的要因は、ここ数年になって注目され始めた腰痛リスクです。


整形外科学会の「腰痛診療ガイドライン2012」では、


腰痛の発症と遷延に心理社会的因子が関与している。


腰痛に精神的要因、特にうつ状態が関与している。


としています。


仕事へのやりがいが低下していたり、人間関係にトラブルを抱えていたりすることで、精神的に抑うつ状態に陥ると、腰痛が新しく発生したり、痛みが長引いてしまいます。


職場のぎっくり腰・腰痛を予防するためには、肉体的なケアだけではなく、精神的なケアが欠かせないのです。


どうすれば……?示された改善策とは

このように、職場のぎっくり腰・腰痛は複合的な要因が組み合わさっていると考えられます。。


どのようにして防げばいいのでしょうか。


指針では、労災としての腰痛を防ぐために、作業内容・作業環境・個々の健康の3つの分野で改善するべきポイントを説明しています。



〇作業管理


重たいもの運ぶなど、腰に負担のかかる作業はなるべく補助機器や機械によって腰への負担を減らすべきだとしています。


台車を活用した省力化も有効です


さらに、仕事中でも腰に負担が少ない姿勢が取れるように気を付ける必要があります。


不自然な体勢を取らなくてもいいように、作業台を設置したり、座椅子の高さを調整できるようにしたりといった対策が必要です。


また、立ち仕事をする際には、片足を踏み台に乗せると腰への負担を減らすことができます。


適宜姿勢を変えて休憩が取れるようにすることも大切です。


長時間の同一作業ができるだけ連続しないように、他の作業と組み合わせるといった働き方のや、1時間座って作業をしたら15分は立って別の作業をするといった切り替えが有効です。


 


 


〇作業環境管理


温度が下がると腰痛を発生・悪化させやすいので、寒い部屋での作業は避け、どうしても寒い環境で行う必要があるときは、できるだけ温かい服装を心掛けたり、暖房設備を設置することが大切です。


座って行う作業では、運動量が減り体から発熱が小さいため、立ち作業よりも高めの温度設定にすべきです。


 


〇健康管理


指針では、運送や看護といった、とくに腰に負担がかかる作業に従事する労働者に対して、当該の作業に配属される際、及び6カ月に1回、健康診断を受けることをすすめています


腰痛を早期に治療することができるだけではなく、問診などで作業の問題点を洗い出すことで腰痛を予防することにもつながります。


積極的に利用しましょう。


また、腰痛予防体操を小まめにすることで、腰の柔軟性を維持することが大切です。


入念なストレッチが理想ですが、時間やスペースが確保できないときには、これまでとっていた姿勢とは反対になる姿勢をとってみましょう。


たとえば、長時間座っていたのなら、立ち上がって腰をそらす。


長時間立っていたのなら、座って身をかがめる。


こうした動きをとることが、腰にかかるストレスを分散してぎっくり腰の予防に有効です。


 


また、特に注意したい作業として、次の5つが挙げられています。



長時間同じ姿勢を続けたり、重たいものを持ち上げたりする作業がとくにリスクが高いことが知られています。


自分の仕事を見渡してみたとき、腰に大きな負担がかかっている作業が含まれていないかを確認してみましょう。


〇リスクの大きな要因から対策していく


リスクアセスメントの考え方を取り入れましょう。


個別の項目ごとにリスクの大きさを評価し、リスクが大きなものから改善していくという考え方です。


いつもの作業を見直して、どの動作が最も腰を痛めやすいか、作業頻度多いかなどからリスクを洗い出し、指針に沿った対策を打ち出していきましょう。


腰痛は生産性を著しく下げる

当たり前のことですが、腰痛があると体を思うように動かせなかったり、集中力がそがれたりすることで生産性が低下してしまいます。


日本生産性本部によると、健康状態によって勤務できなかった時間や医療費、薬剤費などを合算すると、腰痛はうつ病や肥満、高血圧を抑えて最も多くのコストを失うことになるという研究結果が報告されています。(参照:『企業における健康問題への取り組みの視点』日本生産性本部


オフィスでの腰痛対策は労働者だけの問題ではなく、企業経営者にとっても非常に重要な課題なのです。


実はデスクワークでも腰痛のリスクはそれほど変わらない。効果的な対策が生産性の向上に必要不可欠だ。


事業者には労働者の健康を確保する責務があり、作業の実態に即した対策を講じる義務があります。


本来、先頭を切って腰痛予防対策に取り組まなければいけないのは、事業者の方なのです。


労働者の側から労働環境改善を訴えるときにも使えるはずです。


 


つづき⇒『オフィスワーカーの新しい働き方』


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