なぜ慢性的な腰痛に?交通事故の後遺症

交通事故の後、骨折やヘルニアなどのケガはしていないにもかかわらず、つらい腰痛が後遺症として残ってしまうということがしばしば見られます。

また、このような急性期のケガが治った後でも痛みがなかなかとれずに苦しみが続いてしまうこともあります。

その原因はいったいなんなのでしょうか?

原因不明の腰痛の真相として考えられるかもしれない要因をいくつかご紹介します。

骨折していなくても計り知れない衝撃が

近年の人工知能のめざましい進化により、自動運転技術が実現する日もそう遠くないといわれるようになりました。


自動運転が実現することで、非常に多くの交通事故を未然に防ぐことができると考えられています。


というのも、交通事故の大半はドライバーの人為的なミスや法令違反だからなのです。


警察庁交通局の事故統計によると、交通事故の原因として件数の多い順に「漫然運転」「わき見運転」「運転操作ミス」「安全不確認」などとなっています。



(参考:警察庁交通局「平成28年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」)


 


このようにドライバーの不注意によって、事故に巻き込まれる側はもちろん、事故を起こしてしまう側も体勢を整える間もなく、突然大きな衝撃にさらされることになります。


このとき、体では何が起きているのでしょうか。


時速55キロで走行している自動車を使った正面衝突事故の検証では、衝突の瞬間、体にはおよそ12Gの力が働くと算出されています。(参照:近畿大学安全性シミュレーション研究実験室


スペースシャトルの打ち上げ時にかかる力が最大で3Gだといわれていることから、事故時にかかる衝撃の大きさをうかがい知ることができます。


 


このとき、慣性の法則にしたがって私たちの体は前方に大きく投げ出され、次の瞬間には反動で後方に引き戻されます。


特に首はムチのようにしなり、たとえ骨折していなかったとしても靭帯や神経組織に大きなダメージが出てしまうおそれが高いのです。


続く慢性痛は神経の損傷のおそれ

交通事故の障害では、事故後すぐから症状が現れる骨折や椎間板ヘルニアなどの急性症状のほかに、急性症状が治癒した後も痛みやだるさなどの慢性症状が残ってしまうケースがあります。


慢性痛の多くは病院で診察をしても異常が見当たらず、周囲から理解してもらえない中一人で後遺症に苦しみ続けているという人も少なくないといわれています。


 


この慢性痛を引き起こしている要因として、まず2つの可能性が考えられます。


 


1つ目が、事故の衝撃によって傷ついた神経の痛みが続いているということです。これは神経障害性疼痛と呼ばれているもので、首・肩・腕のほか、腰・お尻・脚など広い範囲にわたって痛みや痺れが現れます。


 


2つ目が抑うつなど、精神的に落ち込んだ状態に陥ることで脳の機能が低下してしまうことです。整形外科医がつくる「腰痛診療ガイドライン2012」などにも示されているように、最近では精神的なストレスが蓄積することで自律神経の中枢の機能が低下し、小さな痛みに過敏に反応してしまうおそれがあると考えられています。急性期のケガが治癒した後も残る痛みには、このような精神的なものが関係している可能性があります。



神経障害性疼痛や心因性腰痛では、痛みを完治させることにとらわれず、痛みと上手に付き合いながら生活を元に戻していくことを目標にすることが大切です。


抗うつ薬や「リリカ」といった専用の薬もありますが依存性が高く、薬だけに頼らず好きなことを始めるなどの前向きな生活に転換していくことで痛みをコントロールしていくことが重要なのです。


原因不明の慢性症状では見過ごされてきた障害の可能性も

一方で、後遺障害となかなか認定されない障害によってめまいや頭痛、腰痛などの慢性症状が残っている可能性も指摘されています。


 


「脳脊髄液減少症全国ネットワーク架け橋」によると、交通事故によって脳や脊髄を守り機能を維持している脳脊髄液が漏れ出し、さまざまな症状をもたらす脳脊髄液減少症になる可能性があるとしています。


脳脊髄液減少症では、脳の機能が低下したり、神経が引っ張られたりするなどして、めまいや頭痛、顔面麻痺、自律神経症状、腰痛などのいくつかの症状を複数発症し、さらに気圧の変化によって体調に異変をきたしやすくなります。


(参考:脳脊髄液減少症全国ネットワーク架け橋


 


誰でもなる可能性がある一方で、詳しいメカニズムはよくわかっておらず、心の病などと誤診されてしまうこともあるといいます。


 


 


また、これとは別に首に衝撃が加わったときにあごの位置がずれる「外傷性下顎骨変位障害」によって症状が長引いている場合もあるようです。


かみ合わせの変化によって、顎関節症や頭痛だけではなく、首や腰の痛みにまで発展してしまうケースもあります。


整形外科の診療ではかみ合わせにまで着目しないこともあるので、あごにまで違和感が生じているのなら、歯科にセカンドオピニオンを求めることを検討してもいいかもしれません。


シートベルトは3点支持を

交通事故でケガをしないためにはどうしたらいいのでしょうか。


自動車の中で体を支えてくれるものは、座席とシートベルトしかありません。


体が前に放り出されたり、反動で後ろに引き戻されたりしないように、後方座席であってもシートベルトは必ず着用しましょう。


腰だけに締める2点シートベルトよりも、胸も固定する3点シートベルトを装着することで上半身が揺り動かされずにケガの可能性を低く抑えることができます。


また、首が後ろに倒れるのを防ぐため座席ごとにヘッドレストの高さを変えて首をしっかりと支えられるようにしておきましょう。


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